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人付き合い:人との境界線

堅い境界線vs柔らかい境界線(boundaries)

アメリカの精神科医/サイコセラピスト、アービン・ヤロム(I.D. Yalom)は、「人間の悩みのほとんどが人間関係に根ざしている」と言っています。人間は、ひとりでは生きていけませんから、生まれた瞬間から、他者とのふれ合いの中で共感しあったり、摩擦しあいながら成長して行くのだ、ということを物語っているように思えます。

「境界線」とは我々それぞれのまわりにある目に見えない輪のようなもので、人と接する時には、この互いの境界線を強化することで自己を守ったり、また緩めることで他からの情報を取り入れたり楽しみを共感する役割を果たします。その境界線をフィルターのように考えるとその柔軟度は「硬い」「柔らかい」と個人差があります。人とのふれ合いの中、境界線で無意識に掘り起こされる感情や対応の仕方にもそれぞれ個性が表れるようです。
境界線に表れる個性
みんな「オギャー」と生まれた時にまず、母親との接点が始まります。人間、生まれて初めてのふれ合いの接点。この時点で、なんらかの事情があり、実母に育ててもらえない人もいますが、1日、1日と積み上げられてゆく赤ちゃんの経験と記憶の中にはしっかりと母や育ての親の「接し方」がインプットされていくと考えられています。その記憶の積み重ねは、その人の「個性」としてパターン化されて行く場合が多く、その後、何十年たっても我々の「接し方」にも多かれ少なかれ影響を及ぼし、生き続けるのです。幼児期に危険な状況で育った子供は親(または育ての親)に同化していくことしか安全性を感じられない場合も多く、自分と親との境界線が緩い、あるいはまったくない場合も少なくありません。この場合、親の喜びは自分の喜びともなりますが、親の不安や心配事なども自然と請け負ってしまうので、子供としてはきつい部分もあるかと思います。逆に、親から阻害されて生きてきた子は、自己防衛の為、境界線を硬くして、他とつながりにくいパターンが生まれるケースが多いようです。

衝動的な行動パターン
こういった幼い頃の状況によって形成された境界線のあり方次第で、その後一生の行動パターンが決定されてしまうということではなく、あくまでも衝動的な行動パターン/傾向として表れ易いということです。まず、自己のパターンを認識するだけでも「変化」へとつながります。たとえば、大人になって「もっと人と喜びを素直に分かち合いたいけど心を開けない」とか「どうしてもまわりの威圧的な人の言いなりになってしまう」という場合は、大人になった今の意志と幼児期に根ざす従来のパターンとの間にギャップがあると思っていいでしょう。

堅いvs柔らかい
境界線が堅い場合はフィルターの目が綿密で、外からの影響を受けにくく、自分の世界を守ろうとする力が強く働きます。外からの影響がネガティブな時など、しっかりシャットアウトできるという利点がありますが、反面、ガードが堅く、人との共感も少なく、外からの影響が良いものであっても頑に拒んでしまいがちです。しかし、境界線が柔らかすぎる場合、人との共感を喜び、楽しみ、またよい影響を受け入れ易いという利点はありますが、フィルターの目が粗いので、時として自分が望まない相手の不安やストレスなどをセンサーせずに受容してしまいがちという危険性があります。人と会った後、どうも疲れ易いとか、相手の雰囲気に流されてしまっていると感じたらあなたのフィルターは、柔らかめかもしれません。

境界線を変える
理想的には、自己の意志に沿って境界線のフィルターを自由自在に調節できるようになるのが望ましいのかもしれません。自己を守りながらも相手との共感を喜び、また互いに学べる部分は選りすぐって自己の、そしてまた相手の成長につなげる為に下記の秘訣があります。

1)自己認識を高める:
常に自分自身の心と身体の状態を把握し、自分の境界線内の最も充実した自然な「雰囲気/状態」をしっかり認識する。そして、他者と会っている時にその「雰囲気」がどのような影響を受けているかを敏感に感じ取る。毎日、5分でも瞑想をして自己の自然な心地よい「雰囲気」を身体と心にしっかりと記憶させると自分の基準ができてくる。この際、過去の記憶の中で自分が最も充実していた時をリアルに思い出すと自分のベストの状態を把握して、「基準」にしてしまうと効果的。
2)他者との境界線を尊重する:
原則として「他人への依存を避け、他人からの依存を受け入れない」。一見、不親切で冷たいようだが、境界線を尊重することは互いの成長につながる。親切にする場合は、自分が親切にすることで得られる喜びが報酬であり、相手からの見返りを期待しない。
その為に
a) 自分の問題を相手に押し付けず、また、相手の問題を自分の問題にしない。
b) 自分の責任範囲のことは自分でこなし、また、相手の責任範囲のことを自分が引き受けない。
c)自分ができる事は自分で、また相手が自身でできることを自分が背負ってしまわない。
3)他者との「違い」はトラブルでなく、チャンス!:
他人と自分の「違い」を尊重し、自分の価値感、善悪判断を押し付けない。意見があわない場合、その「違い」を当たり前と思い、「自分を変える必要も相手を変える必要もない、違いがあるからこそ互いを刺激しあって切磋琢磨しあっていける」と「違い」から生まれる「可能性」を尊重する。

ポジティブな変化
もちろん、すべての人間関係や状況に上記があてはまるわけではありませんが、人間関係にまつわるトラブルの絶えない方はこの3点を考え、自分の考えと行動を多少変えてみるだけでもきっと違いがでてくるでしょう。「相手を変えたい」と考える前にまず自分が変わってみる、すると相手も変わらざるを得ない状況となってくる場合が多いのです。他、自分がなぜか人の言いなりになってしまう、また、どうしても頑に心を閉ざしてしまうなど自分の「衝動的な行動パターン」が見えてきた場合は、その衝動を感じた際に、ちょっと間を取ってそれは本当に自分が望む事なのかどうか考えてみてください。きっと瞑想の時に感じる居心地のよい「雰囲気」をしっかりと認識し、それに慣れてゆくことが、一番良い答えへと導いてくれることでしょう。

(参考文献: I.D. Yalom, The Theory and Practice of Group Psychotherapy. http://health.goo.ne.jp/column/mentalcare/m002/0108.html)
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プロフィール

かおる

Author:かおる
父の転勤をきっかけに、シドニーに住み始めて38年の心理カウンセラー。シドニー湾沿いののどかな街の小さなカウンセリング・ルーム(+シティのタウンホールクリニック)で、みなさんだれもが持っている「自己本来の輝き」を取り戻せるようお手伝いさせていただいています。

カウンセリングルームの詳細はwww.eastsidecounselling.com.au
をご覧下さい。

夫と22歳のひとり息子、そして13歳の元気なおじいちゃんわんこ(パグとジャックラッセルのミックス犬)が家族です。

心の辛さ、って目に見えにくいので、意外と自覚しにくのかもしれませんね。だから、ケアを怠り、ついつい自分を叱咤激励して先へ先へ進もうとしてしまう方も多いのではと思います。
このページは、そんなあなたに「ちょっと、小休止」の機会となり、たまには、あなたの「こころ」から届くメッセージに耳を傾ける、きっかけになれば、と思います。
ブログを通じて、みなさんと一緒に「こころの癒し」や「自分を大事にすること」また、「自己セラピー」等について色々な角度から考えてみたいと思います。
ぜひお気軽にご意見や質問などお寄せくださいね。
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